スポーツ指導者の方々へのお願い

 ここまでに、子供達、特に下半身の可動域がかなり低下していること、また「トビラ」や「引き出し」をたとえに、障害予防のためには、常に可動域に余裕をもたせておくことが重要であると述べてきました。さらに野球やテニス他でも、下半身の柔軟性そのものがパフォーマンスにも直結しているはずなのですが、近年の中高での部活や外部チームにおいても準備・柔軟体操が不十分でなおざりにされている傾向にあります。

 今の指導者たちも、自分たちが過去に実践し、学んできたはずなのですが、そういった準備・柔軟体操がどうして今、子供たちに十分には指導していないのでしょうか? 現在の指導者たちが、子供たちの身体を守るという姿勢が不十分で、真に準備運動の重要性を全く認識できていないからだ、としか言いようがありません。確かに指導者自身はさほど障害に悩まされず、大過なくうまくやれてきたため、その重要性を選手として認識することもなかったのでしょう。

 しかしそれは、彼らの指導者たちが、過去に準備・柔軟体操や障害予防に手を抜くことなく、コンディショニングづくりにも時間をかけ、身体づくりという面でしっかりレールを引いてもらって自分たちを導いてくれてきたからこそ、無事に現役を終え、最終的に指導者になれたのではありませんか? 指導者となった以上、守るべき一番は子供たちの身体です。不幸にも不慮のケガで思うような選手生活を送れない場合もあるでしょうが、それらも含めて準備・柔軟体操にもっと比重を置いてほしいと思います。

 幼くても子供たちの柔軟性は成長ともに低下していくものです。学年が上がり、レベルが
上がっていけば、質・量ともに負荷が増えていきます。土日ともなれば、試合や練習で朝から夕方まで、そして振り替え休日ともなれば3連日の場合もあるようです。いくら若くて回復力旺盛であっても、激しい練習を繰り返すほどに、疲労、炎症も蓄積されます。したがって先に述べたように障害を招くことなく、順調にスポーツを継続し続けるためには、柔軟性を保持し続けることが最低限の基本的な事項となります。

 厳しい意見ですが、子供たちは毎年入れ替わります。たとえ子供たちに無理をさせ障害を
生じてしまっても、成績さえ上がれば、知名度もあがり、新たに有望な子供たちが入ってくれることになるのでしょう。確かに今の時代、子供たちを集めることも難しいでしょうし、選手同士、父兄との関係、練習場の確保、経費なども指導者・関係者ならではの難しい側面もあるとは思いますが、しかし指導者の方々には、まずは子供たちが障害に陥ることのないよう、柔軟性に余裕のある環境、コンディションづくりを心がけていただきたい思います。