準備運動・柔軟体操の話

①昭和時代の柔軟体操

 柔軟性が十分にあれば、スポーツ外傷や障害を起こしにくいとされています。昭和時代のクラブ活動では、どの部も集合後まずチーム全体で軽いランニング、そして二人一組で脚を閉じ次に脚を開いて後から押されるような前屈、そして背中同士をお互いに合わせて身体を反らせて背屈させ、その後ラジオ体操以上の準備運動を10分前後かけておこなっていたはずです。当時の部員たちも連日の激しい練習や試合をケガなく乗り切るためには、その程度の準備運動は必要不可欠であると思っていました。中高年世代の部活経験者はみなさんそうであったと思います。

②現在の柔軟体操の状況

 残念ながら、今の時代、近隣の中学・高校の部活動、そして多くの外部チームも、私の見聞きした範囲内ですが、そういった二人一組での準備運動などはおこなわせることなく、各個人に任せているだけで、十分には時間をかけていないようです。確かに若い先生方・指導者であれば、自身も経験してこなかったのかもしれません。

 子供たちに確認すると、柔軟体操はちゃんとやっているよ、と話してくれます。しかし詳しく聞けば、一人だけで膝の曲げ伸ばしやアキレス腱を伸ばす、体前屈・後屈もラジオ体操程度軽く2、3回、そして肩・手首を捻る・回す程度であり、テニスであれば素振り、すぐに軽く打ち合う、サッカーなら軽く走りながらボールを蹴り合うことを準備運動としているようです。

 また近年のクラブ活動の開始時間は16時頃となっており、夏場はともかく、12月の冬至近くであれば、大阪では16時50分にはかなり暗くなっており、準備運動に割く時間が惜しいこともあるのでしょう。昭和時代のわれわれでは15時過ぎには部活が可能でしたので、そういった時間的な制約もあるのでしょう。

 さらに最近の子供たちでは、和式生活を経験しておらず、昭和時代の子供たちと比較して、体幹・下半身の柔軟性が大きく低下しています。この点については別のところでお話しています。

③柔軟性とスポーツ障害

 ここでは身体の柔軟性とスポーツ障害との関連性についてみていきましょう。私は「トビラ」や「引き出し」をイメージして説明しています。「引き出し」や「トビラ」を開け閉めする際、勢いに任せて最後まで開けていますか? 閉めるときもバタンと力強く勢いよくおこなっていますか? どちらも最後まで勢いよく繰り返しおこなうほどに、壊れてしまうことになります。たとえ途中までは勢いよく動かしても、最後はやさしくおこなっているはずです。

 当然のことですが、激しいスポーツであるほどに関節も筋肉も力強く大きな動きが常に要求されます。求められる激しい大きな動きに対し、可動域が足らない、あってもギリギリであるほどに、障害をおこしやすいはずで、逆に柔軟性に余裕があるほどに、障害を起こしにくいのではありませんか? 

 学校・教育関係者、そして部活の先生方には是非とも見直していただきたいと思います。また有名なトップアスリートの方が一言いっていただければ、子供たちも積極的におこなってくれるものと思います。