「腱板損傷」と「インピンジメント症候群」

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肩の疾患の続きになります。「腱板断裂」、「インピンジメント症候群」についても話してみましょう。まずは「インピンジメント症候群」から始めていきます。

① インピンジメント症候群

 腱板の一部である棘上筋が上腕骨と肩甲骨の肩峰との間で圧迫されておこす病態で
す。腱板とは肩甲骨から上腕骨へと関節の中を走っている筋で四つの筋から構成されて
いる筋群です。

 もともと肩関節の近くに上腕骨大結節という部位があり、外側へ突出しています。腕・肘を外へ出して肩を挙げていくことで、上腕骨の突出したこの部と肩甲骨の肩峰の間がより狭くなり、両者があたって擦れて、棘上筋が影響を受けやすいことがわかります。挙げていく途中でこの筋が擦れて引っかかることになり、その病態を「インピンジメント」と呼びます。投球や水泳・テニスなど腕を外に大きく挙げて使うスポーツでおこしやすく、炎症や出血もおこし、「インピンジメント」症状を招きやすくなります。

 したがって、インピンジメント対策にはまず予防的な立場からも肩関節の外からの動きを少なく使うことがポイントとなります。もちろん投球障害ではインピンジメントの他、障害を生ずる部位によってさまざまな病態もあります。どれも予防の原則は、腱板の仕事を主たる動作筋として積極的に使うのではなくインナーマッスルとして肩甲骨と上腕骨を軋むような大きく動きを強いらないように心がけ、肩甲骨主体でおこなうことが重要となります。(肩のリハビリのところでも補足します)

② 腱板断裂について

 この病態は棘上筋損傷です。この筋は腕・肘を外から挙げる、特に初動動作で使われることになっています。インピンジメント症候群と同様ですが、さらに損傷範囲や程度が広がり、棘上筋だけではなく腱板全体に損傷・断裂が及ぶこともあります。損傷の程度によっては肩の痛みや可動制限を強く生じ、痛みがなくても腕が全く挙げられなくなることもあります。ただ、中高年者ではMRIで明確な損傷があっても挙上に困らないケースもあります。

原因としては、やはり腕・肘を身体の幅から外へ出し、挙げるそして回すような動作の繰り返し、積み重ねが原因とみてよいでしょう。もともとこの筋は腱板全体でも上腕二頭筋(ちからこぶ)などの筋に比べて、長さも短く、さほど厚みもありませんので、力強さを求めて大きく振り回すような作業では、この筋を中心に動かして使うべきではなかったのです。障害予防にはこれまでと同様、肩甲骨と上腕骨を固めて使う、つまり安定性を高める作用、言い換えればインナーマッスルとしての働きを主体として肩甲骨ごと使え、ということにもなります。